近年、故人様との最後の時間を親しい方々と落ち着いて過ごしたいという思いから、家族葬を選ぶ方が増えています。家族葬は、ごく少数の親族のみで行われることもあれば、故人様と親しかった友人も参列することもあります。このようなデリケートな状況で、お悔やみの気持ちを込めてお花(供花)を贈りたいと考える方も多いでしょう。しかし、一般的な葬儀とは異なる家族葬では、供花の扱いにも特別な配慮が必要です。
目次
はじめに:家族葬における供花の位置づけ
家族葬とは何か
家族葬とは、一般的に故人様の家族や親族、特に親しかった友人など、少人数で行われる小規模な葬儀形式を指します。明確な定義はありませんが、参列者が10~30名程度と少なく、形式よりも故人様を偲ぶことに重点が置かれる傾向があります。費用や手間を抑えたい、故人様の遺志を尊重したいといった理由から選ばれることが多いです。
家族葬における供花の役割と意味
供花(きょうか・くげ)は、故人様への敬意と追悼の意を表す重要な供物です。葬儀の場を荘厳に飾り、遺族の心を慰める役割も持ちます。お花には故人様への「愛情」「尊敬」「感謝」といった気持ちが込められており、遺族にとっては故人様が生前に築いた人間関係の広さや深さを実感するきっかけにもなります。出棺前には、棺に納める「お別れ花」として使われることもあります。ちなみに生花(せいか)とは、一般に葬儀社が手配し、葬儀会場の雰囲気を整える目的で使われ、祭壇や棺の周りを美しく飾る役割を持っています。
家族葬に供花は贈っていい?遺族の意向を尊重しよう
家族葬において供花を贈る際は、何よりもまずご遺族の意向を尊重することが最も重要です。安易に供花を贈ってしまうと、かえってご遺族に負担をかけてしまう可能性があるため、事前の確認が不可欠です。
まず遺族に意向を確認する
供花を贈りたい場合は、まずご遺族に直接確認を取るのが原則です。故人様の遺言やご遺族の意向で「お花は受け取らない」と決めている場合があるからです。確認する際には、ご遺族が葬儀の準備で忙しいことが多いため、喪主へ直接連絡するのではなく、葬儀を執り行っている葬儀社に問い合わせるのが良いでしょう。これにより、ご遺族の負担を軽減できます。
供花を辞退する理由とは
ご遺族が供花を辞退する主な理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 参列者への金銭的負担を避けたい。
- 返礼品の手配など、ご遺族の負担を減らしたい。
- 会場のスペースが限られており、お花を飾る場所がない。特に、自宅での家族葬ではスペースが問題になることが多いです。
- 生花祭壇を使用する場合など、祭壇に飾るお花の種類を遺族が統一している。 これらの理由を理解し、ご遺族の意思を尊重する姿勢が大切です。
招待されていない場合の対応
家族葬は、親しい関係者のみで行われることが一般的であるため、基本的に招待されていない場合は供花を贈ることは避けるのがマナーです。招待されていない方から供花を受け取ると、ご遺族は返礼品を準備する必要が生じ、結果として負担を増やしてしまうことになります。もし、どうしてもお悔やみの気持ちを伝えたい場合は、葬儀後に改めて弔問に伺い、その際に仏壇にお供えするお花や、日持ちのするお供え物を持参するなどの方法を検討しましょう。この場合も、事前にご遺族に連絡し、弔問の許可を得ることが重要です。
供花の種類と適切な選び方
ご遺族から供花を贈ってもよいと承諾を得た場合は、家族葬にふさわしいお花を選ぶ必要があります。家族葬では、大規模な一般葬とは異なる配慮が求められるため、種類やサイズ、色合いに注意しましょう。
家族葬で贈られる主な花の種類
家族葬で贈られるお花には、主に以下の種類があります。
- 枕花(まくらばな): 故人様の枕元に飾るお花で、親しい友人など、故人様との関係が深い方が贈ることが一般的です。長く飾れるフラワーアレンジメントが選ばれることが多いです。
- 祭壇周りの生花(スタンド花など): 祭壇や斎場を飾るお花で、故人様の霊を慰める意味が込められています。スタンド型が一般的ですが、フラワーアレンジメントの形もあります。
- 花輪(はなわ): 葬儀会場の周囲に飾る、輪状に組まれた花飾りです。しかし、家族葬では参列者が少なく、会場が小規模なことが多いため、花輪を贈ることは一般的ではありません。場所を取る上にご遺族の負担となる可能性が高いため、辞退されるケースが多いです。
- 献花(けんか): お焼香の代わりに祭壇にお供えするお花で、主にキリスト教式や無宗教の葬儀で行われます。献花はご遺族が用意するため、参列者が自分で用意して持参するものではありません。
避けるべき花とマナー
供花として選ぶべきではないお花もあります。
- バラのようにトゲのある花。
- ヒガンバナのような毒のある花。
- ユリやツバキなど、花粉や花が落ちやすい花。花粉が衣類を汚したり、落ちた花びらが清掃の負担になったりするためです。
- 派手すぎる色合いの花や匂いの強い花。一般的には、白を基調とした落ち着いた色合いが好まれます。 故人様が生前好きだったお花を贈りたい場合は、ご遺族に相談し、問題がないか確認しましょう。
お花のスタイルとサイズ
供花のお花のスタイルは、フラワースタンド、フラワーアレンジメント、かご盛り の3種類が一般的です。家族葬の場合、会場の広さによってはフラワースタンドを飾るスペースがないこともあるため、葬儀社の指示に従うか、事前に確認することが重要です。 供花のサイズについては、厳密な決まりはありませんが、大きすぎるお花はご遺族に置き場所の面で迷惑をかけてしまう可能性があります。特に故人様の自宅で行われる家族葬では、一般の住宅に飾れるような適度な大きさのものを選ぶことが大切です。迷った場合は、花屋や葬儀社に相談して見繕ってもらうのが安心です。
家族葬における供花の費用相場
家族葬で供花を贈る際も、費用相場を把握しておくことは重要です。高価すぎるお花は、ご遺族に気を遣わせてしまう可能性があるため、適切な範囲で選びましょう。
供花の一般的な価格帯
供花は1基(いっき)単位で贈るのが基本で、一般的な費用相場は1基あたり7,000円~2万円程度です。スタンド型の生花は比較的高価になる傾向があり、フラワーアレンジメントやかご盛りは安価な選択肢として挙げられます。 かつては祭壇の左右に飾るために2基(1対)で贈るのが一般的でしたが、近年ではスペースや費用の負担を考慮して1基のみを贈ることが主流です。
関係性別の費用目安
供花の費用相場は、故人様との関係性によっても異なります。
- 両親: 3万円~10万円程度
- 兄弟姉妹: 3万円~5万円程度
- 親戚(叔父・叔母など): 1万円~3万円程度
- 仕事関係者・友人・知人: 5,000円~1万円程度
故人様との関係性が深いほど、費用は高くなる傾向がありますが、これらはあくまで目安です。地域によって風習が異なる場合もあるため、心配な場合は周囲に相談することをおすすめします。
「お花代」を贈る選択肢とその相場
供花を贈る以外に、ご遺族が葬儀で飾るお花を手配する際に使ってもらうための「お花代」を渡す方法もあります。これは香典とは別に、または香典の代わりとして贈られることがあります。
- お花代の表書き: 仏式では「御花代」、神式やキリスト式では「御花料」と記します。宗派が不明な場合は、法要前であれば「御霊前」と記載するのが無難です。
- お花代の包み方: 不祝儀袋や白無地の封筒を使用し、名前は水引の下(不祝儀袋)または中央より下(白い封筒)にフルネームで記載します。連名の場合は目上の人から順に右に記載し、4名以上は「一同」とまとめて記します。
- お花代の相場: 故人様との関係性によります。供花の相場と同様の目安で考えると良いでしょう。ご遺族が供花や香典を辞退している場合は、お花代も贈ることは避けるべきです。ご遺族にお返しを用意させる負担をかけないよう、意向を尊重しましょう。
供花を贈る際のマナーと注意点
家族葬で供花を贈る際は、ご遺族への配慮を最優先に考え、いくつかのマナーと注意点を守ることが大切です。
宗派・地域の慣習に合わせた選び方
供花を選ぶ際は、故人様の宗派や地域の慣習に合わせることが重要です。
- 仏式・神式・無宗教: 白い花を基調とし、菊、百合、カーネーションなどが一般的です。淡い黄色や紫色、ピンク色を取り入れることもあります。
- キリスト教式: 基本的に白い花のみで、ユリやカーネーションがよく用いられます。キリスト教では造花を使わないしきたりがあるため、生花を選びましょう。 宗派が分からない場合は、葬儀社に確認するのが確実です。
喪主への直接連絡は避ける
供花に関する問い合わせは、原則として喪主ではなく葬儀社に連絡することが推奨されます。喪主やご遺族は、葬儀の準備や故人様との別れで多忙を極めているため、直接の問い合わせは大きな負担となる可能性があるからです。葬儀社はご遺族の意向を把握しており、適切なアドバイスを提供してくれます。
名札の書き方(個人・連名・会社名義)
供花に添える名札には、贈り主の名前を正確に記載することがマナーです。宛先は、故人様ではなく喪主の名前を書くのが一般的です。
- 個人名義: 贈り主のフルネームを記載します。
- 連名(親族・友人など): 人数が多い場合は「〇〇家一同」「親族一同」「子供一同」「友人一同」などとまとめて記載します。人数が3~4名程度までなら連名で記載できます。その場合、目上の方の名前を右側に配置するのがマナーです。
- 会社名義: 会社名と代表者名、または「株式会社〇〇 〇〇部一同」のように記載します。会社名が長い場合は、略号(例:(株))を使用することも可能です。
供花を断られた場合の対応
冒頭でもお話ししたとおり、まずは、供花を送ってよいか、ご遺族の了承を得ることが必要です。しかし、ご遺族から供花を辞退された場合は、その意向を尊重し、無理に贈ることは避けるべきです。ご遺族の負担を増やさないことが最も大切です。 もし、どうしてもお悔やみの気持ちを伝えたい場合は、以下の方法を検討しましょう。
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- 後日弔問に伺う: 葬儀後にご遺族の都合を確認した上で、改めて弔問に伺い、仏壇にお供えするお花や日持ちのする品物を持参します。
- 弔電を利用する:弔電とは、お悔やみの気持ちを伝える電報のことです。ただし、供花と同様に、弔電を辞退する連絡があった場合は遺族の意向を尊重しましょう。
- お供え物を持参・郵送する: 高価すぎない個包装のお菓子や季節の果物、線香やろうそくなどを持参または郵送します。この場合も、ご遺族に負担をかけない金額の品物を選びましょう。
- 何もしない: 親しい付き合いがない場合は、あえて何もしないのも選択肢の一つです。後日ご遺族に会う機会があれば、その際にお悔やみの言葉を伝えるだけでも十分です。
供花の手配方法とタイミング
供花を贈ることが決まったら、適切な方法で手配し、指定されたタイミングで届くように準備しましょう。手配が遅れると、希望のお花が用意できなかったり、葬儀に間に合わなかったりする可能性があります。
供花を手配するタイミング
供花を手配するタイミングは、以下の通りです。
- 枕花: 故人様のご遺体が安置された日から通夜が行われる前までに届くように手配します。
- 祭壇周りの生花(供花): 通夜が行われる日の午前中か、遅くとも告別式の前日までに手配を完了させるのが望ましいです。
- 通夜・告別式当日の手配: 直前の手配は、発注先の混雑や配送の問題で間に合わない可能性があります。もし当日になりそうな場合は、葬儀社に相談しましょう。葬儀開始の3~4時間前までに相談すれば、手配してもらえる場合もあります。 葬儀に参列できないが後日お花を贈りたい場合は、葬儀から1週間ほど経過してから故人様のご自宅へ贈るのが良いとされていますが、事前にご遺族の許可が必要です。
葬儀社・生花店・インターネットでの手配方法
供花の手配方法は、主に以下の3つがあります。
- 葬儀社に依頼する: 最も確実で安心できる方法です。葬儀社は葬儀全体の状況を把握しており、会場の雰囲気やご遺族の意向、宗派・地域の慣習に合わせた適切な供花を提供してくれます。
- 生花店に注文する: 花の種類や組み合わせを自由に選びたい場合に適しています。ただし、葬儀社によっては外部からの供花の持ち込みを断るケースがあるため、事前に葬儀社に確認が必要です。
- インターネットで手配する: 手軽に注文でき、配送まで依頼できるサービスが増えています。利便性が高い一方で、実物を確認できないため、サイズや種類、色合いがイメージと異なる可能性もあります。こちらも事前に葬儀社への確認が必要です。
手配時の注意点
供花を手配する際には、以下の点に注意しましょう。
- 支払い方法の確認: 供花の代金は、ご遺族に頼んだ場合でも最終的に贈り主が支払うことになります。支払い方法を事前に確認し、忘れずに清算しましょう。
- 必要な情報の提供: 供花を依頼する際には、斎場名、喪主名、葬儀の日時、贈り主の名前、故人様との関係性、清算方法など、正確な情報を伝えることが重要です。
- 葬儀社の持ち込み規定: 葬儀社によっては、提携先の生花店以外からの供花を受け付けていなかったり、持ち込み料が発生したりする場合があります。必ず事前に確認しておきましょう。
供花へのお返しは必要?
供花を贈った側、受け取った側の両方にとって気になるのが、お返しに関するマナーです。家族葬では、お返しに対する考え方が一般葬と異なる場合があります。
お返しに関する考え方
家族葬で供花をいただいた場合、お返しをするかどうかは、ご遺族によって考え方が異なります。一般的には、家族葬では原則として供花のお返しは不要と考えられています。特に親族や会社など、複数の方からの連名でいただいた供花に対しては、お返しは不要と考えるのが基本です。 これは、家族葬がご遺族の負担を軽減し、故人様との穏やかな別れを重視する形式であるため、お返しによって新たな負担を生じさせないという配慮が背景にあります。
お礼の伝え方
お返しが不要とされている場合でも、供花を贈ってくださった方々には、感謝の気持ちを伝えるのが最低限のマナーです。
- お礼状の送付: 基本的には、お礼状を送る対応で十分とされています。四十九日を過ぎた忌明けを目安に、感謝の気持ちを伝えるお礼状を送りましょう。
- 口頭でのお礼: 仕事関係の方から供花をいただいた場合は、忌明け後の出社日に直接お礼の言葉を伝えるのが丁寧です。口頭で伝えにくい場合は、メールや手紙で感謝を伝えても問題ありません。 お返しをする場合は、供花代の1/2から1/3程度の金額を目安に、品物を選ぶと良いでしょう。
よくある質問
Q1:家族葬の供花に親族の名前はどのように書けば良いですか?
家族葬で親族が供花を贈る場合、少人数であれば個人の名前を連名で記載することも可能です。その際は、目上の方の名前を右に書くのがマナーです。大人数でまとめて贈る場合は、「〇〇家一同」「親戚一同」「子一同」「孫一同」のように、故人様との関係性に応じた表現で記すのが一般的です。夫婦で贈る場合は、夫の氏名のみを記載するか、夫の氏名の左に妻の名前のみを記します。
Q2:家族葬の供花に友人や会社関係者の名前はどのように書けば良いですか?
友人関係で供花を贈る際は、「友人一同」や「〇〇大学 友人一同」などと記載します。会社関係者の場合は、「株式会社〇〇」や「株式会社〇〇 代表取締役〇〇」、「株式会社〇〇 〇〇部一同」のように書きます。連名の場合は、人数が多すぎると文字が小さくなり読みにくくなるため、3〜4名程度に限定し、それ以上の場合は「有志一同」とまとめるのが適切です。
Q3:供花と香典は両方贈るべきですか?
供花と香典は、両方贈ることもできますし、単独で贈ることも可能です。葬儀に参列する場合は香典・供花・供物のいずれか、または組み合わせを検討します。しかし、ご遺族が供花や香典を辞退している場合は、どちらも贈らないのがマナーです。ご遺族の意向を尊重し、負担をかけないことが最も大切です。
Q4:家族葬で喪主自身が供花を出すことはありますか?
はい、喪主が自ら供花を出すこともあります。故人様への追悼の気持ちを表すため、または祭壇を整える目的で、喪主が供花を用意するケースは少なくありません。この場合、故人様との縁が最も深いことから、左右対称に2基の供花(一対)を出すのが一般的です。兄弟姉妹がいる場合は連名で、いない場合は個人で手配することが多いですが、費用については親族と相談して決めるのが良いでしょう。
まとめ:家族葬に合わせた供花を贈るために
家族葬において供花を贈るかどうかは、ご遺族の意向を最優先に尊重することが何よりも大切です。供花は故人様への敬意と追悼の気持ちを表す大切な手段ですが、ご遺族に不要な負担をかけてしまっては本末転倒です。
まずは、ご遺族から供花に関する明確な辞退の連絡がないか確認し、迷った場合は直接喪主ではなく葬儀社に問い合わせるのが賢明な対応です。贈ることが許された場合は、宗派や地域の慣習、お花のサイズや種類、名札の書き方といったマナーを守り、適切なタイミングで手配しましょう。
ご遺族が供花を辞退された場合は、その意思を受け入れ、後日弔問に伺ったり、お供え物を持参・郵送したりするなど、別の形で心遣いを伝える方法を検討してください。
ご自身の状況に合わせて、最適な供花のマナーを理解し実践することで、故人様への最後の敬意とご遺族への深い配慮を伝えることができるでしょう。葬儀に関するご不明な点やご不安があれば、信頼できる葬儀社に相談し、後悔のないお見送りの形を見つけることが大切です。